読書

「柿の種」ノススメ

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150704

数年前の早春に、神田の花屋で、ヒアシンスの球根を一つと、チューリップのを
五つ六つと買って来て、中庭の小さな花壇に植え付けた。
いずれもみごとな花が咲いた。
ことにチューリップは勢いよく生長して、色さまざまの大きな花を着けた。
ヒアシンスは、そのそばにむしろさびしくひとり咲いていた。
その後別に手入れもせず、冬が来ても掘り上げるだけの世話もせずに、打ち棄て
てあるが、それでも春が来ると、忘れずに芽を出して、まだ雑草も生え出ぬ黒い土
の上にあざやかな緑色の焔を燃え立たせる。
始めに勢いのよかったチューリップは、年々に萎縮(いしゅく)してしまって、今年はもうほ
んの申し訳のような葉を出している。
つぼみのあるのもすくないらしい。
これに反して、始めにただ一本であったヒアシンスは、次第に数を増し、それが
みんな元気よく生い立って、サファヤで造ったような花を鈴なりに咲かせている。
そうして小さな花壇をわが物のように占領している。
この二つの花の盛衰はわれわれにいろいろな事を考えさせる。
(大正十二年五月、渋柿)

以上引用
寺田寅彦「柿の種」より

寺田寅彦は東京帝国大(現東大)卒の物理学者ですが、
夏目漱石とも親交が深かったことが関係あるのか
理科とは無関係の文章も多く残しています。

淡々と日常や感じたことを綴る

明治から昭和初期に生きた寅彦が
淡々と日常や感じたことを綴っている
この本「柿の種」が好きで
手の届くところに置いています。
タイトルのセンスもいいですね。

いわゆるいいとこのお坊ちゃん育ちだったせいか、
激動の時代の中でもエリートコースを歩みました。
そのせいだけではないと思いますが
世の中をひねくれた見方ではなく
まっすぐに毎日の生活の些細なことにも目を向け
日記を書くように感じたことを素直に綴っている言葉は
ほのぼのとした気持ちにさせてくれます。

毎日が忙しすぎて心に余裕がないあなた
一度、寺田寅彦を読んでみませんか?

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2015-07-04 | Posted in 読書No Comments » 

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